顧客との距離を詰める話
顧客との距離を詰めるというのは、マーケティングに関する本を読むと大きく分けて「回数を重ねる説」と「ベネフィット説」の2つが有るように思います。
「回数を重ねる説」は、単純接触効果と言われて、とにかく毎日会えば仲良くなるというもの。でも、そしたら学校の生徒たちは皆仲良しになっている気がします。
「ベネフィット説」は、相手に価値の有る情報を渡して、「価値有る担当者」と思わせて仲良くするというもの。でも、そんなに価値の有る情報は転がっていない。
僕は、顧客との最近流行りの「心理的安全性」を構築するというものが良いと思います。回数説もベネフィット説も、相手と自分が相対ですが、相手と自分が同じ方向を向いています。これが良いと思うのです。
さて、顧客と「心理的安全性」を構築するとはどういうことなのでしょうか。
一番よくあるもので、「クレーム対応」を例に上げてみます。
まず、クレーマー自体がどのようなものか、です。大抵のクレーマーは「売上は少ないのに文句は人一倍」という厄介な存在です。人一倍声も大きく、ゴネることにも慣れているものですから、他の会社でも有名になっていたりして、悪い意味で顔が広かったりします。
そんなクレーマーを裁判等でやり込めても良いのですが、逮捕とまでは行かず結局相手の恨みを買うだけということも有りえます。
この様な厄介なクレーマーへの対応(※)ですが、クレーマーの特徴として「社会的に成功していない」とか「社会でひどい目に有った」とかの不安定な精神状態の為に八つ当たりしていることがよく有るようです。(NHKクローズアップ現代の「カスタマーハラスメント」にありました)
この様なクレーマーの「不安」をまず理解しようとしてみるのです。クレーマーが「社会的弱者」で「不安」な場合、「社会的弱者」で有るが故に周囲の人から軽んじられていると思っている可能性があります。
その弱者に対して、「いくらでも話は聴く」と「傾聴の姿勢」を見せるのです。言い訳も早めの謝罪もせずに、とにかくいくらでもあなたの不安を聞いてやる。という姿勢を見せると、案外「実は悪いと思っていた」という言葉も聞き出せる程です。
この瞬間、僕とクレーマーは敵対ではなく、クレーマーの「不安」を僕とクレーマーと二人で見ている形になります。クレーマーは激高した後、落ち着いて話せたことについて「居心地が良かった」のです。これこそが「心理的安全性」だと思います。
※クレーマーには多くの種類があり、「慰謝料よこせ、土下座しろ」は「恐喝・恫喝」に当たります。これは犯罪ですので、きちんと法的機関に回しましょう。
特徴的な例だったので分かりにくかったかもしれません。しかし、言いたかったのは、お互いが同じ方向を向くと仲間意識に似た居心地の良さを感じることが出来るのです。
では、メソッドとしてはどうなのでしょうか。
例えば、「大口受注」になるかもしれない案件に対して、「これで営業成績一位になれる」などと思いながら提案をすると大抵失敗するということです。
よく有るのが、「2〜3年のコストだけの比較」と「上層部の営業力」を利用して一気に契約を結んでみたが、数年後に収支が悪化し、クレームの種になってしまった。当時の上層部も居なくなり、契約だけでなく評判までも落としてしまった。などです。
これは、完全に相手を営業上の数字としてしか見ていないために起こることです。
では、どうすれば良いのか。
「営業先が自分の会社だったら。」「営業先の株式を持っているとしたら。」と思って望むことです。
営業先が自分の会社なら、とにかく「安定的な収支になる資産」を求めるはずです。
また、自分が営業先の株主なら、明らかに利益が見込める投資以外には反対したくなるはずです。勿論、そんな都合の良い投資は滅多にありませんが。
そのことを思いながら、営業先も考えて提案を聞いているはずです。
その相手のことを思いながら話すと、きっと提案前のヒアリングがぐっと違ってくるはずです。相手の目標の為にヒアリングしているのですから、ズカズカ聞けば良いのです。
「弊社として出来ることは〇〇です」
『〇〇はありがたいけれど…』
そうなると、なにかボトルネックがありそうです。
その時に「出来ることはありますか?」と一言言うだけでグッと距離を詰めることが出来ると思います。
ビジネスパーソンであれば当たり前の話でしょうか。
とにかく、必要なのはお互いの心理的安全性な気がするのです。